黎明流について

黎明流空手道黎明拳舎の術技について

(1)流派名

空手道黎明拳舎は、元厳誠流空手道師範小西慧介を先頭に、長年修行を共にした有段者6名他9名で、1992年1月に厳誠流空手道厳誠塾から分離独立して設立された空手団体です。当然ですが厳誠塾の理念や技術内容が母体となっています。

さまざまな流派団体が、それぞれのスタイル、試合ルールを持ち競い合っている空手界にあって、自らが光り輝く存在であり続けたいとの願いをこめて、「夜明け前」という意味を持つ「黎明」を団体名に採用し「黎明拳舎」と名づけました。

2011年は20周年を迎えるに当たり、私たちは団体設立時の「初心」を大切にしながら、一流の流派に成長することを願って、流派名を『黎明流(れいめいりゅう)』と決めました。

私たちは空手みちを学ぶ者として、温故知新を旨とし、先達の労苦をしのびつつ、自らの旗幟を鮮明にして、他者からも学び自らの糧とし、自らもまた他者の糧となれるよう、精進努力を重ねてまいります。 そして私たちが歩んだあとに私たちの道が出来ていることでしょう。

(2)技の体系

空手道の技は流派、団体によって個々の技が異なり、スタイルや試合ルールも異なります。柔道や剣道と違って、空手界は複雑です。

もし空手団体に優劣があるなら、それは練習内容-体系の優劣が問われると考えます。ある有名な空手団体の創始者は「100人入門して1人残ればいい。それは宝石のような存在だ。」という主旨のことを言われていました。私たち空手道黎明拳舎の見解は違います。その人に、空手を学ぶ最低限の意志と条件があるなら、修行を経て、誰もが「達人」「名人」になれると考えます。スポーツとしての宿命を超えて「強く」なれるために、長い修行の節々で上達するための目標を持てるように、練習体系を常に工夫改善していきたいと考えています。

入門するからには誰もが当面の目標を黒帯取得と考えていただきたい。そのために、突き蹴り、受け、移動、コンビネーション、約束組手、組手、型、といった練習内容をこなし、三年間程度(最低週2回の道場稽古)で、一応の修得が可能なようにと考えています。

(3)技の特徴

空手道黎明拳舎の技の特徴としては、組手における「実戦性」を追求し、合理的な技の組み立てを第一義としますが、伝統空手の範疇で研究を進めています。従って総合格闘技の方向ではなく、在来の古流伝統空手の文化的価値を尊重しながら、合理化近代化を目指しています。パワー(剛力)を偏重せず、急所を素早く攻撃する技が基本であり、さばきや組み打ちも、グランド技そのものの追及ではなく、突き、蹴りをあくまで極め技とするための前提と捉えています。また組手に強くなるためにも、立ち方をはじめとする基本を大切にし、型も捨てないのです。

ルール上の大きな特徴として、素手素面の上段(顔面)攻撃も含めた「実戦的な」ルールを採用しています。当然、上段(顔面)攻撃に対する受け技の上達が不可欠となり、練習内容においても、他団体との違いが大きく表現されます。

他流派、他団体からも学び、改良を加えつつ、現在の個々の技と術技体系があります。小さな団体としての利点を生かして、これからも練習内容-体系の点検・改良をおこなっていきます。

(4)型について

型と組手は、よく車の両輪にたとえられるのですが、私たちも型と組手を全く対等に捉えています。型にしても、組手にしても、その中心は基本にあります。正確な基本と、同時に「上達論」に裏づけられた基本の集大成こそが、型と組手の向上に必然的につながっていくのです。

型の利点として、型の持つ<対称性>は、型の修練の中で日常的に左右の技を使うことになり、その習慣性には魅力があります。また、型は「型の裏」を修行することによって一層対称性を習得できます。また、型は場所の制約が少なく、ちょっとした空間があれば、練習出来、体力的な差異や、各自の身体的諸条件の中で、各々強弱やスピードを調整しながら演武することが出来ます。型を演じるときに、相手の姿を想定することで、相手の攻撃を、息づかいを、間合いを意識の中に組み込んでこそ上達が可能です。

組手つまり相手との攻防の中で本来つかむべき、間、気合い、スピード、突っ込み、気迫、呼吸、攻防の機徴を、型稽古でのびのびと修練し得るのです。また古伝の型には空手技法の原点といえる技があり、競技化される中で失伝されることはあってはなりません。しかし当然のことですが、型稽古だけやっていれば組手も上達するということはありません。あくまでも組手稽古を前提に型稽古もあるのです。その意味では、型稽古は空手の身体の使い方を学び、習得した技のレベル保持することに第一義があるのです。

空手道黎明拳舎では、独自の創作型である「黎明その壱」「黎明その弐」「黎明その参」「黎明その四」「黎明その五」の5型を基本型と位置づけながら、古儀の型である「ナイファンチ初段」「ナイファンチ弐段」「ナイファンチ参段」「チンテ-」「チントウ」「パッサイ」「クーシャンクー(小)」「クーシャンクー(大)」「ウンスウ」「ワンシュウ」を含めて15型を修練型と定めています。

(5)組手について

空手団体である以上、最終的にはいわゆる「組手」において、修行者個々のレベルアップを図ると共に、団体としての総体的レベルが問われると思います。私どもは、筋力、体力、「運動神経」という個々の宿命のレベルを超えて誰もが「強く」なれることを実証するための練習体系を目指しています。

レベルに応じた約束組手の豊富化を一層研究改善していきます。約束組手の研究こそ組手上達の<命>です!

各自のレベルに応じて約束組手を<量>から<質>へ変化させることによって組手に上達していくことを可能にしていきます。

「型と組手は両輪である」ことを実証していくことの困難さを自覚しつつ、組手に強くなる(上達する)ための研究に一層力を入れていきます。

(6)武器術について

本来空手は琉球(沖縄)から伝えられたものであり、徒手空拳の空手の発展と共に、武器術(琉球古武術)も発展していました。


かつては稽古においても、徒手空拳の空手と武器術はお互いに競い合って上達していったのです。私ども黎明流も厳誠流からその一部(棒、サイ、ヌンチャク、トンファ)が伝承されていましたが、全体的には体系づけての伝承はなくほぼ失伝していることは残念です。中でも棒術は空手の術技と関係が見出しやすく失伝させるのは忍び難いとの思いから「黎明流棒術」としての稽古体系を完成させることに着手し、2019年12月に教材DVDを完成させることができました。その中では棒術の型として古流の型「松風の棍」に加えて、独自型「尭明その壱」と「尭明その弐」を制定しました。「拳とは武芸の源なり」というコトバがあります。願わくば武器術の中の棒術も修行に加えていただきたく思います。