試合規定

黎明流空手道黎明拳舎試合規定

2011年1月8日改訂

1.試合に関する基本的な考え方

空手道黎明拳舎は「空手はスポーツにあらず、武道にて候」を一つの理念としています。また、「弱者のための空手」を追求する中から、試合ルールにおいては上段(顔面)攻撃も含めた「フルコンタクト」という「実戦的な」ルールを採用しています。しかし、他団体他流派のさまざまのルールを否定するものではなく、むしろその一長一短を研究し、どのようなルールにも対処できる空手でありたいと考えます。私どもは、その実戦性や理念においていささかの経験と自負心を有するものでありますが、組手試合における基本的な考えとして、次のようにとらえています。

実戦性を重視する以上、本来(理念として)制限となるルールがあってはなりませんが、競技者の安全を第一とし、また社会通念上の許容範囲を外れることなく十分にその目的を達成することが必要と考えます。組手試合は修行の過程における技術的上達度を測る一方法でもあり、この基準においてその内容を検討すべきです。「勝者」「敗者」あるいは「強者」「弱者」といった色分けは部分的な評価にしか過ぎず、大局的に人間性の向上と技術的進歩を促す、広い視野を持つことが大切です。唯我独尊といった孤立した道を選ぶ必要はありませんが、一時的な格闘技ブームに迎合したり、表面的な合理性のみを追求せず、基本的な理念をふまえてより良いものに改善していきたいと考えます。

2.試合の進行

(1)試合の進行

試合は、競技者が所定の位置に着き、審判の「お互いに礼、はじめ」の合図で開始する。競技者の判別を明確にするため、一方の競技者は赤紐を着ける。その進行は審判の笛により規制され、笛が鳴った場合は速やかに攻撃を停止し、その場で4メートルほど離れて待機する。(※指示があれば所定の位置に戻って同様に待機する)審判の笛による規制がない以上試合は続行される。正当な事由で審判に許可を得た場合を除き、片方の競技者が独断で試合を中断した場合、試合放棄と見なし失格とする。大会においては記録係を置き、時間計測と記録用紙への記入を行う。

(2)試合の中断・中止

競技者は防具の異常、身体の異常、不戦敗の申し出など一定の事由がある場合は、審判に挙手をして許可を得て試合の中断を要求できる。また、相手の有効技等による戦意喪失で審判の判定がない場合、自己の敗戦を認める場合に限り試合中止を要求できる。組み打ちの最中など、「まいった」の発声ができず審判に対する意志表示が不可能な場合は、床または相手の身体を数回叩いて中止を要求する。組み打ちは、技を仕掛けている状態と判断されれば続行するが、単なるもつれ合いは審判の判断により中断させる。

3.有効技及び判定

原則的に直接攻撃、組み打ち、投げ、締めなど全ての攻撃技を認める。しかし破壊力は判定の基準として二次的なものとし、技としての認識、正確性を重視する。競技者はお互いの安全に留意し、極力「寸止め」をすることに心掛けねばならない。ポイント制は取らず「一本」先取りにより勝敗を判定する。的確な有効技または相手を完全に制しての極め技と判断された場合「一本」とし、これに近い技を「技有り」とし、「技有り」二つで「一本」とする。

4.試合場と試合時間

原則的には無制限で行うべきであり、会場規模や時間的な余裕がある限り、勝敗が着くまで自由に競技する。大会などで運営上の制約がある場合は、次の通りとする。

(1)試合場は中心部を設定し、半径5~6メートルを目安に、著しく移動した場合、審判の判定により、所定位置に戻す。場外制度は設けず、審判の指示がない以上、自由に競技を続行する。

(2)試合時間は3分とする。一方の「技有り」の場合は「優勢勝ち」とする。双方「技有り」無し、あるいは双方「技有り」の場合は延長戦とする。延長戦は同じく3分間とし、双方「技有り」の延長の場合は、「技有り」先取りにより「合わせて一本」とする。双方「技有り」無しの延長の場合は、「一本取り」を原則とし、時間終了をもって一方に「技有り」があれば「優勢勝ち」とする。延長戦にて勝敗が着かない場合は、審判の判定による「判定勝ち」を決める。決勝戦は原則として、時間無制限の「一本取り」により行う。審判は、注意、説明あるいは着衣、防具の修正、軽度の怪我の治療などで時間を要する場合は、時間計測の停止、または時間の延長を記録係に指示できる。

(3)団体戦においては「優勢勝ち」、「判定勝ち」、「引き分け」により決着を着け、原則として延長戦は行わない。勝者同数の場合、代表決定戦により、原則として時間無制限にて対戦する。

5.空手具、防具

競技者は原則として白または黒の規定の空手着を着用する。七分袖、半袖の空手着やはちまき、汗止めなどは規制を受ける。防具は拳サポーター(及び男子は金的ファールカップ)を必ず着用しなければならない。その他のサポーター、テーピング、マウスピースなど標準的なものは特に規制しないが、対戦相手と同等条件になるよう指導を受けることがある。マウスピースの着用を推奨するが、義務ではない。

6.反則、禁じ手、失格、注意

(1)審判の笛が鳴った後の攻撃、審判の「お互いに礼、はじめ」の合図前になされた攻撃、規定の空手着や防具を装着していない場合、開始時間に所定位置に着かないなどの場合は反則、失格の対象となる。極度の興奮状態にあったり、対戦相手や審判に対する挑発的な態度、人格を無視するような言動も同様である。また飲酒、薬物使用状態、健康状態など審判の判断により制約を受ける場合もある。戦意喪失と思われる場合や消極的な試合態度に対しては、審判は適時、指導注意を促すが、極端な場合「注意」を宣告し、対戦相手に「技有り」を与える。

(2)意図的な目つぶし、喉への攻撃、後頭部への直接攻撃は禁じ手とする。またとどめをさすような執拗な攻撃や、組み打ちで完全に相手の体を制しての直接攻撃も禁じ手とする。禁じ手の場合は対戦相手に「技有り」または「勝ち」を与える。ただし、カウンターや反射的な攻撃、連続技による攻撃の一部など、制御不可能と思われるものはこの限りではない。

7.審判

審判は主審一名、副審一名の2名とする。両者は常に移動しながら判定しうる位置取りをしなければならない。主審、副審は対等に独自の判断で進行、判定を行う。主たる進行及び判定が合致しない場合は、両者の合議に基づき判定の合図は主審が行う。なお、主審が必要と判断した場合、審判本部(宗師と館長)に協議を求めることが出来る。また、審判本部からも協議を求めることが出来る。判定確定後についても、宗師(最高審判長)より協議を求めることが出来る。

8.異議申し立て

競技者は審判の判定に異議がある場合は、即時に異議申し立てをなし得る。審判は試合を中断して速やかに協議し、判定の結果を改めて宣告し、その主旨を必ず競技者に説明しなければならない。この後、判定は確定し、競技者は速やかに判定に従う。